マグライトもついに

ブルーメタリックの輝きが薄暗い空間の中で際立っていて、その妖艶な誘惑に吸い込まれていく

高校の修学旅行でウチは神戸のモトコータウンを徘徊していた
確かグループごとの自由行動で女の子達は異人館でベルサイユの薔薇のような仮装を楽しむのが代表的なモデルコースだったのに、グループリーダーだったウチは5人の女学生を連れて中東系外人が潜伏する高架下商店街を散策するコースを選んでしまった

高校の制服スカート姿が浮いてみえ、怪しげな路地を歩くスリルは事件的な痛快さがあったのであるが
その中東系外人の小さな店で青光のするマグライトを手に入れたのだった

生徒たちが枕投げする部屋で買ったばかりのライトを照らし、夜中にホラードラマのようなイタズラに早速活躍した
あれから20年が経過し、このマグライトはついに寿命がきた

軽量化が進み、持ち歩くデイパックの中はいつのまにかマグライトから小型ヘッドランプにバトンタッチした
車の片隅に忘れ去られようとしているその存在を手にとってみるとボロボロと崩れていく

マグライトにつまった物語をたぐり寄せながら、今度の闇夜を照らす日のプランを作ろうと思い始めた