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ENJOY THE SILENCE ホイアンにろう者だけのステキなカフェに出会った

ベトナムの古い港町ホイアン

 


ベトナム中部にあるホイアンをご存知だろうか

トゥボン川河口に位置する古い港町で、世界文化遺産にもなった「古い町並み」が残る旧市街地は、日本・中国そしてベトナムといった歴史的建物があり、センスのよい伝統工芸品ショップやオシャレなレストランなどが立ち並ぶ
時間帯によるが昼間は歩行者天国で車も通らず、ぶらぶら歩きながらの散策が楽しめる

その奥には屋根付きの日本橋(来遠橋)があり、シンボル的な存在となっている

1593年に近くの日本人街に住む日本人が建てたらしい
調べると日本は戦国時代。まだ豊臣秀吉がブイブイ活躍していた頃。関ヶ原の戦いが1600年って、そんな時代にベトナムに渡って暮らす日本人ってきっとタフな人だったと思うんだ
一緒に飲んだら熱い志が伝わって、楽しそうだよね
…ちなみに江戸幕府の鎖国令でその地に住む日本人は強制帰国させられる歴史もあった
(詳しくは “ホイアン 鎖国” でググってね)


オシャレなカフェが立ち並ぶチャンフー通り

 

さて、そんな街なかで、特にオシャレなチャンフー通りをブラブラ散歩するのは楽しい

その一角に古民家風のセンスのいいカフェがあり、窓がないので、心地良い風がそのまま吹き抜けて開放的、そして味のある黒い柱や梁がよいアクセントとなっていたのが気にいり、ここでティータイムにしようと入っていく

すぐに目を引いたのは

「THANK YOU」

「ICE」

「HOT WATER」といった単語が並んだ木のブロック

オーダーしようとした時、 カウンターの奥に飾ってある文字に息を飲む…
[ENJOY THE SILENCE]と書かれてあったから

落ち着いた雰囲気でゆっくりとティータイムを楽しむ様子は、まるで茶道に通じるような精神に共感を覚えた
そしてカウンターをみたとき、スタッフ同士のやりとりをみて、本当にびっくりした…
なんと手話を使って、コミュニケーションをしていたのだから

すぐさま、そのスタッフの女の子に手話できいてみた 「Are you Deaf?(あなたはろう者ですか?)」とね
こういう場合は日本手話ではなく、国際的な手話を使う

「Yes! ここにいるスタッフ全員、ろう者よ」

「WOW!!うちらも同じ、ろう者だ 日本から来たんだ」今度は向こうが驚いた

そして、すぐに手話でオススメのコーヒー、ティー、そして茶菓子を教えてもらったんだ

 

3種類の選べるティーセット

ティーに合う陶器とビスケットがついて、淹れ方も手話で説明してくれる

 

こちらはコーヒーセット 希望のコーヒーがチョイスでき、コーヒーで凍らせた氷と共に出てくる

うちらは手話でオーダーしたけれど『一般の聴者はどうやってオーダーするんだろう』って思うよね
ここにはちゃんとオーダーシートが用意されていて、好きなものにチェックをつけることができる
メニューの説明も書いてあるから、ゲストもわかりやすいし、ろう者スタッフもこれがあればバッチリだ

TROLL   『みんな、学校は一緒だったの?』

スタッフ『女の子2人は一緒、あとは違う学校だったよ』

TROLL   『お茶やコーヒーを栽培する人も、ろう者なの?』

スタッフ『いいえ、聴者よ 在庫が少なくなると、ろう者スタッフがオーダーしているの』

TROLL   『ココは良いシステムだね、センスのいい店でティーもコーヒーも最高に美味しかったよ』

勤務中なので、少しの間だったけれど話を聞かせてもらった

ここでは「ろう者4人x3チーム」でローテーションしてるらしい
ベトナム、ダナン、ホイアンの地名の手話表現なども教えてもらい
この店の裏通りにも様々なハンディをもった人がお皿やクッションカバーなどの刺繍など作る工房を案内してくれた

周りをみるとアジア系の聴者ゲスト女性が『Cool Water』のブロックをもって、スタッフに見せた
スタッフは慣れた手つきで「OK」サインをし、厨房の奥へ消え、そして、コップに入れた水をもっていった

えっ日本以外でお冷や(水)のサービスがあるのにも驚いちゃったのだけど
でも、その時に受けとったアジア系の彼女の嬉しそうな顔で『Thank you』を全面に表現する姿にドキッとさせられた

忘れていた何かが、ここにはあった
世界遺産の町という地理上、多くの外国人が訪れる
”ベトナム語が話せない” というギャップが逆に、ここでのコミュニケーションを豊かにしている気がしたんだ

だから、木のブロックに書いてある簡単な英語を介して、通じ合うティーハウス
ベトナムのローカルティーやコーヒーをすする、その時間に全身をそこに集中できる
香りを楽しみ、器の模様、色を楽しみ、そして五感を研ぎ澄まして味わう

せわしなく動く日本の立ち食いそばの対極にあるのは、ゆったりと流れるこの時間

何より、スタッフの無邪気な笑顔が言葉以上の空間を提供してくれている
ふと、戦国時代にホイアンに住んでいた日本人を想う

彼らもまた言葉を越えた意思疎通があって、あたたかい時間を過ごしていたんじゃないかと、ね

ショップ:Reaching Out Teahouse
アドレス:131 Tran Phu Street   Hoi An
 http://reachingoutvietnam.com/