視界を遮られた樹林帯を昇りつめると美しい大地と空が広がっていく
水を利用してマニ車をまわす水車の原理
手書きのくたびれた看板が多い中で路上にぽつんと貼りだされたポスター
近くにチーズ工房があるらしい
あの赤い屋根が目印だ
番地もナビもいらない、目視でオッケなんてシンプルなんだろう
熟成されている
みるからに美味しそうだ
手にとるとズシリと重い
大;1200ルピー(日本円1200円位)
小; 800ルピー
うちらがろう者であることを知ると突然ジェスチャーをはじめた
「ボクの息子も君たちと同じだ」
そういうと2個買ったチーズの袋にもう1個チーズをつめてくれたのだった
「トレッキングか、がんばれよ」
日本のオヤジが若者にゲキを飛ばすようにその透き通った目で見送ってくれた
3個になったチーズは毎晩スライスしてシェルパやポーターともシェアしよう
小路を歩きながら、その息子はどこで何してるのだろう、と考えた
オヤジに聞くと遠いところにいると指をはるか向こう側をさしたけれど
カトマンズ方面だろうか
この村にも小さな学校はあるが専門のろう学校に通うために
小さい頃から親と離れ離れになるのは日本の昔のろう学校と変わらない
(今も遠方の子は寮に入っている)
この美しい谷で暮らすのと都会で仲間と寝泊まりをするのとどっちがいいのだろうか
ウチはきっと後者に違いない、とこの輝く風景を眺めながら
言い聞かせるようにしてチーズファクトリーを後にしたのだった