峠越えは行動時間がながく、夜明け前から登りはじめた
空が白みかけていく
Pass(峠)までにある唯一のTeaHouse(茶屋)
十数人でいっぱいになるほど狭く、そして冷蔵庫のように寒い中
欧米トレッカー達がひしめきあう
震えながらチャイをすすると、フランス人らしい彼女が
「手を股の間にハサむといいのよ!」とジェスチャーで励ましてくれる
しかしネパール人ガイドやポーターは遠慮して中に入れず、そのために、
わずかながら毛布を貸し出し、外で休んでいた
やがて陽が射し込む
広大な風景を前に、人は黒い斑点でしか見えない
歩き続けることで、トロンパスはみえてきた
数えきれないタルチョの旗には
様々な想いがつまっているのだろう
タルチョの色は
青・白・赤・緑・黄の順に
それぞれが天・風・火・水・地を表現
でもここまで運んでくれたのはそのエリアのひとたちが
食べ物や燃料を運んでくれたおかげ
峠を越えた先は、ただ道が続いているだけ
日本は森林限界より下は、森が広がって道がみえないことが多く
この、どこまでも続く道は新鮮に感じた
太古から続く地形はただの起伏の連続でしかない
そこに一筋の道を刻み、意味を与えたのは我ら人間
そしてトロンパスから降りた所には
ヒンズーとチベット仏教の聖地
Muktinath(ムクチナート)があり、かのガンジス川源流が
あふれているのだった
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